「目玉焼きのある生活」戯曲公開

クリスマスプレゼント、第2弾。

「目玉焼きのある生活」の戯曲を公開します。

ぜひ、目玉焼きを焼きながらお読みください。


上演時間:約25分 キャスト:1人

上演を希望される場合は有料、無料公演ともにツクネル tsukuneru まで必ずご連絡ください。

mail:tsukuneru@gmail.com

「目玉焼きのある生活」


#1

S1/フクロウの鳴き声

M1/opening


ナレーション:「夜の世界」では、ある女の子が、特に冒険をすることもなく部屋でぼんやりとしていました。少し時間があるので、その部屋を覗いてみましょう。ある天気のいい日、と言っても深夜なので太陽は出ていませんが。女の子はいつものようにゆったりと目を覚ましました。


寝室からのそのそと出てくる女の子

リビングのソファに座って、しばらくぼんやり


ナレーション:おやおや、まだ眠たそうですね、さ、頑張って起きて。彼女は毎朝、じゃなくて毎晩、ラジオを聴くのが日課です。ただ今日は何やら特別な日らしく…?


のそのそと寝室に戻ってラジオを取ってきて、机に置く

スイッチを入れると、夜のラジオ(ミッドナイトラジオ)が流れてくる

ラジオDJ:good evening!夜の世界のみなさん!時間は深夜0時、お目覚めはいかがですか?今日も1日張り切っていきましょう!ミッドナイトレディオ、本日もDJオウルがお送りします。


聴きながらキッチンへ行って歯を磨く

歯を磨きながらリビングへ、ソファに座る


ラジオDJ:さっそくお便りが届いています。ラジオネーム「カフェイン60%」さん。高いですね〜。「オウルさんこんばんは。」はいこんばんはー。「いつも楽しく聴いています。」ありがとうございます。「先日、ヘッドライトが壊れました。原因不明です。」あらーそれは。「長い間使っていたので、これを機にちょっと良いものに買い換えようと思っています。オウルさんはどんなヘッドライトを使っていますか?オススメのヘッドライトがあれば教えてください」なるほど。ええっと。私はですね、今ここにあるんですけど、トミタのヘッドライトですね。なんといっても軽い。デザインはとてもシンプルでサイズもコンパクトなんですけど、その割に照射範囲が広くて重宝してます。ちょっと前はホロイのやつを使ってたんですけど、ちょっと重くて。頭痛くなっちゃったんですよね、でもホロイはデザインが豊富ですから。なんか、プライベート用と仕事用で2本持ってる人も増えましたね、うちのディレクターなんかオシャレさんなんでね、3本持ってますよ。可愛いんですよこれが。このベルトの部分の柄がね。うん。いやー、毎日使うものなのでね、良いものがね、見つかると良いんですけど。あれですよ、ヘッドライト付けないで外出ると道路交通法違反ですからね、ぜひ早く買ってください。では次のお便り。ラジオネーム「三日月ワンダーランド」さん。「オウルさんこんばんは。」こんばんはー。「毎晩起きてすぐに聴いてます。」ありがとうございます。「さて、今日は月に一回の満月の日です。」え、そうだっけ。(調べる)あ、本当だ。今日満月だわ。えー、「わたしには満月の日の楽しみがあります。それは、昼の世界のラジオを聴くことです。」…ほう?「信じてもらえないかもしれませんが、1年前に机の上からラジオを落としたのがきっかけで、わたしのラジオはなんと、昼の世界のラジオを拾うようになったのです。それも満月の日の深夜0時15分から30分までの15分間だけ。今日はその貴重な1日です。早速聴いてきます。なので今日はミッドナイトラジオは聴けません。すみません。それでは。」


キッチンに戻ってうがいをする、ガラガラペッ

女の子、なにやらしきりに時計を気にしている

リビングの机を拭き、ある道具を取りに行く

時計をラジオのそばに置く 卵セット(お皿と卵)も置いとく


ラジオDJ:って、ええ!なにそれ!内容は素敵だけど最後は突き放されるとっても複雑なお便りですね〜!三日月ワンダーランドさん複雑だよ!お便りありがとう!「昼の世界」のラジオか〜。昼の世界、私も話には聞いたことありますよ。皆さんはご存知ですか?私たちの住む世界とは真逆の「昼の世界」について。まあだいたい私たちの世界の真裏に位置するらしいです、私も詳しくは知らないんですけど。どうやったら行けるのかな、あんまり考えたことないな。なんでも、昼の世界の人たちは朝に目が覚めて、昼間に活動するらしいですよ。大変ですね、これからの季節なんか、汗かいてしゃあないですね。私には耐えられないです。うーん、本当にそんな世界があるのかしら、昼の世界ではどんなラジオが流れてるのかしら。今から15分か〜。とてもロマンチックですね。ぜひ私も聴いてみたいなあ。どうぞ、楽しんでくださいね。また、内容を教えてください。


時間をきっちりチェックして、道具でラジオをいじる(ひよこでラジオを叩く)

ラジオDJ:それではここで一曲聴いてみましょう。起きたてにピッタリのこの曲、この1ヶ月チャートを独占している、「朝のゆるい体操」で、「@@@@」


#2

S2/砂嵐

S3/電子レンジの音

M2/エッグラジオのテーマ


昼のラジオ(エッグラジオ)が始まる

タマゴ兄さん:こんにちは

女の子:こんにちは!

タマゴ兄さん:タマゴ兄さんがお昼の12時をお伝えします。皆さん、お久しぶりです。今日も元気ですか。

女の子:元気です!

タマゴ兄さん:僕はちょっと眠たいです

女の子:(笑)

タマゴ兄さん:今月もエッグラジオ、ゆるゆると始めたいと思います。担当は、変わらずタマゴ兄さんです。

女の子:よろしくお願いします。

タマゴ兄さん:このラジオは、月に一度、ゆるゆるとタマゴについて語るラジオです。全国タマゴ協会の提供でお送りしています。ではまあ、早速コーナーいってみましょうか。タマゴ兄さんの〜

タマゴ兄さん・女の子:誰でも出来るタマゴクッキング〜

女の子:(拍手)

タマゴ兄さん:今日も、皆さんも簡単に作れる卵料理を紹介します。先月はスクランブルエッグでしたけど、皆さん作り方は覚えてますか?

女の子:はい!(ノートを取り出す)

タマゴ兄さん:まぁもうおさらいはしません、聞き逃した方は、ドンマイです。ぐぐりゃ出てきます。さて今日作る卵料理は…


ノートの白いページを用意する


タマゴ兄さん:目玉焼きです

女の子:目玉焼き…!

タマゴ兄さん:目玉焼きです。

女の子:目玉焼き…

タマゴ兄さん:メモの用意はいいですか?材料から説明します。まずは、まあみなさんお気付きだとは思いますが、卵1個。

女の子:あります!(卵を手に持つ)

タマゴ兄さん:それから、油ちょっとと、水ちょっとです。


熱心にメモを取る

タマゴ兄さん:作り方を説明しましょう。まず、油を入れてフライパンを熱します。そして卵を割る、中火で1分焼く、すると、透明だった白身が、白くなってくるんですね。そのあと、お水をちょっと入れて、フタをします。弱火で2~3分。すると半熟黄身の目玉焼きが完成です。黄身にもっと火を入れたい時には、火をとめてそのままお好みのかたさになるまで待ってください。終わり、今日も今日とてシンプルですね。ではもう一度繰り返します。まず、油を入れてフライパンを熱します。そして卵を割る、中火で1分焼く、すると、透明だった白身が、白くなってきます。そのあと、お水をちょっと入れて、フタをします。弱火で2~3分。すると半熟黄身の目玉焼きが完成です。黄身にもっと火を入れたい時には、火をとめてそのままお好みのかたさになるまで待ってください。簡単ですね。誰でも作れます。…え、本当に誰でも作れるのかって?…そう言われると思って。いってみましょうか恒例の、「レッツタマゴクッキングターイム」。何かと言うと、はい、実際にぼくが作ってみて、本当に誰でも作れるということを証明するわけですね。


ラジオの音量をあげる。メモをキッチンに持っていき、料理の準備をする。

タマゴ兄さん:僕が作れたらみんなも作れるだろうという、まあ安易な、考えですよね。いいんですけど。作りますよ、今日も。はい、えー、フライパンがね、あります。みなさんもありますか。ここに、油を引いて、と。えー卵卵…卵を、割ります。パカ。ジュー。焼けてます。卵、焼けてます。そりゃね、焼けますね。


と、セリフに合わせて目玉焼きを作る。

タマゴ兄さん:(しばし沈黙、卵の焼ける音)えー、なんの時間でしょうかこれは。限りなく放送事故に近い、あ、白くなってきましたね。よしよし、そしたら、ここに、水水…はい水を入れます。おおー。ジューってね。フタをしまーす。はい、ここから2分ね、間を繋がなきゃいけないという。あ、カンペがでてきました。(カンペを読む)皆さんは目玉焼きは何派ですか?醤油派?塩派?せっかくなので、みんなで言ってみましょうか、声に出してくださいね、はい、せーの

女の子:醤油派!

タマゴ兄さん:まあ僕には聞こえないんですけどね。後でお便りで送ってください。はい、そんなこと言ってる間に、はーい、完成しました目玉焼きでーす。ちなみに、ぼくはマヨネーズはなんですけどね(笑)

女の子:うわーーー!(頭を抱える)


お皿に乗せて、リビングに持ってくる。

食べる準備をする。


タマゴ兄さん:それでは、一緒に、

女の子・タマゴ兄さん:いただきます


食べる。

タマゴ兄さん:まぁ、目玉焼きですね。いかがでしたか?タマゴ兄さんの、誰でも出来るタマゴクッキング〜。今月も誰でも出来るタマゴ料理を紹介しました。来月は、茶碗蒸しです。難易度上がってない?それでは、一旦CMでーす。


手紙セットを取りに行く、手紙を書く

「拝啓、タマゴ兄さん

お久しぶりです。

今月もステキな卵料理を教えてくれてありがとう。

タマゴさんはマヨネーズ派なんですね。

ごめんなさい、私は醤油派です。

迷いましたけど、醤油をかけました。美味しかったです。

来月は茶碗蒸し。卵を何個使うのかな、そろそろ買い足しに行かなくっちゃ。

夜の世界より愛を込めて。

三日月ワンダーランドより」


フラッグのように手紙がかかってるのでそこに書いた手紙をかける

#3

目玉焼き食べながらラジオを聞く。


タマゴ兄さん:はい、休憩明けです。あ、目玉焼き食べてました。美味しかったです。では届いているお便りを読みたいと思いまーす。あ、今日もたくさん、ありがとうございまーす。えーと、いつも通り、この束の中から僕がランダムに引き抜いて読みたいと思います。ディレクター選んでくれたら良いのに。はい、1枚目…えい。はいこれですね、ラジオネーム「白シャツメガネ」さん。タマゴ兄さんこんにちは。はい、こんにちは。僕は目玉焼きにはケチャップをかけます。…これだけ?ちょっと…え、えー。1枚目なのに…。うーん。ケチャップか…。まあ僕とは分かり合えないということで。気を取り直して2枚目いきます。えい。はい、ラジオネーム「カフェラテとカフェオレの違い」さん。何なんですかね、違い。…ミルクの量とかじゃないですか。…あ、適当ですよ。タマゴ兄さんこんにちは。はい、こんにちは。コーヒーに合うタマゴ料理を教えてください!…え〜。次茶碗蒸しだしな…どうしようかな。コーヒーに合う卵料理…。フレンチトーストとかどうですか。まああれほぼパン料理ですけど。でもタマゴ使ってるしセーフじゃない?あ、ダメ?ま、一旦それで我慢してくださーい。うちで紹介するかどうかは未定です。パン料理なんで。はい、じゃあラストいきます。えい。ラジオネーム「見すぼらしいカーテン」さん。すごいラジオネームですね。カーテン買い換えた方がいいんじゃないですか?えーっと…タマゴ兄さんこんにちは。はい、こんにちはー。突然ですが、僕は夜が好きです。とにかく月曜日の朝がとても憂鬱です。みんな夜に動けばいいのに。タマゴ兄さんは朝型ですか夜型ですか?とまぁ、全く卵に関係ない質問が来ましたけども。エッグラジオなのでちょっとは気を使ってほしいですね。見すぼらしいカーテンさんは目玉焼き何派なんですかね。また送ってください。えーと、朝型か夜型か、か…


女の子、興味津々


タマゴ兄さん:そうですね、どちらかと言えば…ま、夜型ですかね?


懐からクラッカーを取り出して鳴らす

SE4/パッパパーン

タマゴ兄さん:まあ、朝も別に苦手ではないんですけど。気持ち、夜のが過ごしやすいですよね。涼しいし。暑いの苦手なんですよ、汗かくし。まあ基本家に引きこもってますし関係ないんですけどね。はい、まあ、夜型、ってことで。(エコー:夜型ってことで、夜型ってことで、夜型ってことで…)


勢いよく立つ。そして座る。そして立つ。

しばらく立ち尽くした後、部屋をうろうろと歩きまわる。

そして、何かを思いついたのか、新しい手紙を書く。


「拝啓、タマゴ兄さん

初めて、手紙を出します。いや、正式には初めてじゃないんですけど、ちゃんと出したのは初めてです。初めまして。いつもエッグラジオ楽しく聴いています。

あの、放送で、よ、よ、「夜型」だと仰いましたよね。

驚かれるかも知れないんですけど、私…じっ実は、「夜の世界」に住んでいます!

夜の世界というのは、あれです、あなた達の世界の真裏に位置する、あの、みんなが夜に動いている世界です!

あの、夜の世界、いいです。涼しい、快適。汗かかない。みんな1人が好きであんまり干渉してこないし、引きこもりにはぴったりです。外はとっても静かで、月の明かりは太陽のように厳しくないです。必要なものだけを照らしてくれます。嫌なことは見えません。だから、夜の世界には辛いことなんてありません。外は真っ暗だけど、みんな気持ちは明るいです。

タマゴ兄さんも、是非、夜の世界に遊びに来てください。」


ボールペンを動かす手が止まる。


女の子:遊びに来て下さい…


ボールペンを置く

ため息をつく


#4

女の子:どうやって〜!


ひっくり返る

しばらくぼんやりとする

大きくため息

お皿を片付け始める

と、ぽつりと


女の子:飛行機…?


机の上を片付けて、机を拭く


女の子:意外と車で来れたりするのかな


片付け終わりでソファに座る

音楽流れ始める。


女の子:免許持ってるのかな…。何才なんだろう。うーん…私よりちょっと年上、がいいな。普段は何してるのかな。引きこもって…本とか読んでるのかなあ。コーヒーとか入れて、大人な感じで…「カフェラテ?カフェオレ?僕はブラック派かな。」とかね。どんな部屋に住んでるのかな…(部屋をぐるりと見渡す)、「可愛いお部屋ですね」、へへへ。え、センスがいいですね?いやいや、そんなことないですよ〜。(マスキングテープを壁にペタペタ貼り付ける)あ、…これくらい?もうちょっと?…うーん、これくらいかな、身長。おお…。おお〜。髪は短いのかな、長いのかな。メガネとか、かけてるのかな。あ、ショートカットよりロング派だったらどうしよう…。普段どんな服着てるんだろう…

と、自分の格好に目をやる


女の子:あ、やべ、パジャマだ。


女の子、デート服を取り出してくる


女の子:へへ。やっぱり卵料理が好きなのかな。君のタマゴ料理を食べたくて会いに来たんだ…とか?


音楽、楽しくなってくる

デート服を持ち、くるくると回る。

印をつけたところと並び、恥ずかしくなる。


女の子:私の作ったタマゴ料理を食べてください!なんちゃって!


カランカラン、と扉が開き、タマゴ兄さんが現れる


タマゴ兄さん:お邪魔します。

女の子:え??え…??

タマゴ兄さん:へえ、可愛いお部屋ですね

女の子:あ、あの

タマゴ兄さん:コーヒーもらってもいいですか?あ、ブラックで。

女の子:あ、はい。

タマゴ兄さん:本当に外真っ暗なんですね。びっくりしました。


女の子、コーヒーを入れる。


タマゴ兄さん:ヘッドライト付けてくださいって警察の人に怒られちゃって。すみません、ここくるの初めてなんですよって言ったら、仕方ないですねって貸してくれたんですよ。ほら。お土産に持って帰ります。見てくださいよ、これ。

女の子:トミタの…

タマゴ兄さん:軽くて、付けてないみたい。いいですねこれ。

女の子:あの、え、タマゴ兄さんですよね…?

タマゴ兄さん:ん?そうですよ

女の子:え、え、あの、どうやってここまで来たんですか?


アイスコーヒーを持ってくる

タマゴ兄さん:飛行機ですよ。当たり前じゃないですか。流石に車は無理かな〜

女の子:免許持ってるんですか。

タマゴ兄さん:持ってますよ。

女の子:年上だ…

タマゴ兄さん:コーヒー美味しい

女の子:あ、あの、すみません、え、立ってみてもらっていいですか。

タマゴ兄さん:え。なんで?(立つ)


印と高さが同じ


女の子:おお…おお〜!

タマゴ兄さん:変な子だなあ。(笑う)

女の子:あの、あの、私、エッグラジオ、聴いてて、大ファンなんです。あの、レシピ!そうだ、レシピ、全部メモしてて、タマゴ、タマゴも!ストックしてて、

タマゴ兄さん:ありがとう。

女の子:私、昼の世界の、タマゴ兄さんに、会いたかったんです。

タマゴ兄さん:僕も会いたかった。

女の子:え?

タマゴ兄さん:君のタマゴ料理を食べたくて会いに来たんだ。


女の子、呆然とする


タマゴ兄さん:ダメ、かな?

女の子:だ、ダメじゃないです!食べてください!目玉焼き、作ります!

タマゴ兄さん:目玉焼きはお昼に食べたからもういいかなあ。

女の子:ああ、そっか

タマゴ兄さん:あはは(笑う)

女の子:あっそうだ、これ、


女の子、さっきかけた手紙を外す


女の子:これ、今日のお便りです。いつも、届けられないから、こうやって

タマゴ兄さん:これ(天井にかかっている手紙)、全部そうなの?

女の子:そうです。あの、これ、よかったら。


女の子、タマゴ兄さんに手紙を渡す

タマゴ兄さん:嬉しいなあ、ゆっくり読むよ。ありがとう、三日月ワンダーランドさん。


暗転


SE5/ニワトリの鳴き声

机の上に突っ伏して寝ている女の子

終わり

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